日々夢現

床に不二家のミルキー飴が落ちていて捨てちゃおっかな・・箱庭の蟻んこにご馳走してあげました。
包みを剥いて隅っこに置くと箱庭の中の空気が変わったのか蟻社会は俄かに落ち着きを無くした。
幼いとき庭で飽くことなく観察していた蟻は5ミリ位あってもっと個々の表情を読めて面白かったのだが家に住み着いたやつらは精々2・3ミリの小型だから全体の行動ぐらいしか見取ることは出来ないが久しぶりに蟻ウォッチャーになってみた。
彼らが何を持って餌の到来を知るのか解らないのだが。つまり嗅覚か視覚か・こちらが知りえない性質の何らかの感覚か。。彼らが夜空に浮かぶフルムーンのような甘い物体に気付くのには思った以上の時間を要した。何かある!途轍もなく旨い素敵なものの存在。蟻社会のざわめく様に今朝思いをめぐらしていたことが重なる。。其れはさておいて。。一匹がやっと探し当てたのを確認して次のやつがやって来るまでもしばし時間が要った。三番目四番目と次第に時間が狭まり後は烏合の衆と化して行く。
ミルキーにたどり着いた蟻が面白かった。ぴたっとへばりついたまま動かないのだ。うっとりしたように動かないのだ。ミルキーの表面はまだとろけていないから粘着したわけではなさそうだ。必死に身に余る物体の表面を抱きしめて微動だにしない。
働き蟻だから斥候だとばかり思っていたのに一度へばりついたやつらは職務不履行。個々の幸せにとろけている。
後からたどり着く者たちが先達の迷い道の轍を踏んでやってくるのも興味深い。誰かが最短距離の新経路を見つけるのではないかと思いきや誰もが同じ小石をわざわざ迂回してやってくる。先達にあくまで従順であるのが掟なのだろうか。
夕刻の強い光線に晒されていたため熱が篭ったようになってだるい。どれくらい箱庭を覗き込んでいたか思うと・・思わずに擱こう。この小型蟻たちはミルキーを皆して巣穴まで運ぶつもりはないのじゃあないか?
明日朝夜露に濡れて蕩けた飴は何匹かの生命を奪っているかもしれない。であったにしても蟻たちは恐れることなく此の突然降って湧いた甘い夢を嘗め尽くすだろう。