小さな世界

  • プールの思い出

泳ぐのはあまり得意ではないが潜水は好きだ。頭から飛び込む入射角が大事でプールの底を目指す。息が続く限り水を掻くと水面を泳ぐ何倍もの距離を進むことができる。軽く25メートルは行ってしまうのだ。一瞬喧騒が消え水の中なのに鳥になって空を飛んでいるような開放感を感じる。昔これに味を占めて横浜公園の森に囲まれた美しいプールに通っていたことがあった。水深が深く水が冷たいので子供が少なく森に囲まれているので陰になることが多いから日焼けしたい若者の客も少なかった。 
そんな大事な私の穴場は程なくして雑誌が取り上げテレビで放映され芋の洗い場と化し奪われたわけだが、水の底の光の揺らめきは今でもはっきり頭の中にある。
公共のプールであるから飛び込みも潜水も禁止なのだが木陰で本を読みたまに飛び込んで頭を冷やしている客を見覚えた監視員は見逃してくれていた。今はそんなところ何処にもないだろうし恥を知るので水着も着ない。したが夏の記憶にこんな場面を持っていることは大事な財産であると思っている。