スケッチ

入り口左に馬頭観音沈丁花の植え込みが芳香を放つ。アパートや人家が迫ってはいるが長い参道が確保されていて、四季折々に飽きさせない様樹木が配されている。これからだと連翹なんかもあったように思う。秋には銀杏を拾い、途中に宿り木を茂らせたちしゃの木を見止めた好んで立ち寄る寺だ。
先月の小春日和によった折のこと。長い参道の正面に小さなお堂があって、其処の縁でいつも昼寝をしている猫がいない。かなりの年寄り猫で警戒することも面倒みたいに誰にでも撫でることを許していた。根が生えたように居眠りをしている猫だって何か外すことの出来ない用でも在るのだろうと開かずの本堂やちしゃの木を見上げ愛でたりしてしばし遊んだあと、猫のいるはずの縁を見やると、隅に墓場のおさがりみたいな花束が手桶に挿してあるのに気づく。
ちしゃの満開を見たいと思ったのは此のときからだった。

*萵苣:ムラサキ科の落葉高木。西日本の暖地に自生し、庭木としても栽植。高さ十メートル。樹皮と葉は柿に似る。6〜7月頃白色の合弁花を開き、果実は球形で、熟せば黒褐色。カキノキダマシ。チサ。
 別名エゴノキエゴノキというと嗚呼とわかる人もいる。果皮にエゴサポニンという有毒物質を有し、これを好んで食べるヤマガラは皮を剥いて食すそうである。