鶏牛蒡

涼しさにうっかり飲み込まれかけていると秋の物思いの季節にはまだ早いといわんばかりに暑さがぶり返す。味覚の季節本番までに体力を挽回して置かなければとかえって正気づくのがおかしい。
極幼いうちに鼈(すっぽん)を口にした記憶があり、濃いゼラチン質のしつこさが印象に残っているのだが、鶏牛蒡という料理はこれに少し似ているような気がして、ここ一番元気をつけたいと思うときに拵える。
蓋が割れて所在無げにしていた土鍋を拾い上げ鶏牛蒡を拵えてみると、使い込んだ落し蓋とのコンビネーションも堂に入っていて具合がいいのでこれで作る。
鶏の腿肉を一口大に切り紹興酒醤油少々で下味したものを少量のごま油で皮目から煎り付けて余分な油は切る。牛蒡一本を二三センチに小口から切ったものを加え更に油をまわすように炒めてから浸るくらいの水を入れて醤油味醂を同量(腿一枚に対しだいたい大匙一づつ)で調味し始めは落し蓋で二三十分、蓋を外して煮詰めるように二三十分煮る。(完全に水分を飛ばしきってはだめ)早めに仕上げ二三時間自然に冷まして煮凝りが出来たぐらいが食べごろだ。たっぷりの白髪葱と揉み海苔・七味を添える。