ガラスの雪

クリスマスが近づくと庭に下ろしてあった樅の木が掘り起こされ、押入れの奥にしまってあった飾りを詰めた箱が引きだされる。それは物心ついてから毎年繰り返される家の行事で結構長く続いた。
毎年箱の中の飾りが増えあるいは失われてゆく中で一番懐かしく思い出されるのが半分を占めていたガラスの雪だ。それは極細いガラスの繊維で出来ていてきらきら輝く繊細でとても美しいもので、飾り付けをする際はちくちくと皮膚を刺し、直に折れて粉になって解けるように減っていった。何でそんなものがあったのかは解らないのだが今にして思えばあの魅惑的な代物はとても危険なものだったのだ。雪があったのは極短い間で学校に上がる前までにはすっかりなくなっていたがその美しさは格別で未だ記憶から去らない。