ゆめにだに

夢にだに見で明かしつる暁の恋こそ恋のかぎりなりけれ
和泉式部のこの歌も出展されていたのだが、家へ帰ってみるとどうしても思い出せない。昨日一日ずっと記憶を手繰っていたのだがだめで、やっと判明した。思い出せずに焦れている。焦れていることが恋みたいで趣深くもあった。
荘子の言う理想郷、無何有の郷というのはなんら人為のない場所のことを言うのだそうだが果たして其れは美しい場所なのだろうか。美しいというのは人の作り出した概念であって、、人為の及ばぬ場所に美は存在するのだろうか。この歌は、夢にさえ見ない極致の恋を文字という形にした傑作だと思う。生を得た時の中で僅かにでも夢を紡ぐことができたなら其れは素晴しいことだろう。残りの頼み少なけれども夢だなそれ。