椿事

日暮れて後、予てより降る弱い雨は風を伴い雪へと変わる。
三月の雪なんてさほど珍しいことではないさ。四月に雪が降ったことだってある。完全に雨に変わった夜半、よく響く雨音を聞きながら、襲ってくる眠気を払ってまで何するでもなく起きている。砂糖のような雪が大気にまで溶け出してとろりと甘ったるいこんな晩は悪夢を見そうな気がして眠る気になれない。
夢というのは睡眠中に持つ幻覚であるという事のほかに、儚く頼みがたきもの或いは理想とか願いという意味ももつが、良くも悪くも、うなされるような悪夢であろうとも、あした目覚めるという救いがあるものなのではないだろうか。果敢に夢に赴こう