数日前一寸面白い夢を見たので覚えておこうと心に留めたはずだったのだが、いざ書き止めようと記憶を紐解いたところ、其れは霞がかかったように曖昧模糊として言葉にならない。鮮明な夢で、憶えていられるとの確信があったから少々狼狽した。
過ごしてきた年代のいくつかの時点のわたしと現在の私が、日暮れ時の台所で俎に向かい包丁を持って夕食の支度をしている。日暮れの光りを意識しながら手元に注意を向けているだけでお互いの間に何の感慨もない。あの頃はよかったとも、年取ったわねとも言わないのである。全ての時点で同時に現在を感じていて、其処には進歩も変化もなかった。性格をヴィジョンとしてみたのではないだろうか。ただ曖昧模糊とした塊には存在感があり、手を伸ばせばつかめるような、そんな後味だけは今もある。やっぱ上手くはかけない。。