昨日少し風があったせいだろうか。日干し煉瓦のように固くしまった土の上に、銀杏の青い実がこぼれていて、周囲に幾つもの蝉穴を見つけた。一度この暗く深い穴から蝉が地上へ出てくるところを見てみたい。
それは月の無い晩だろうか、それとも満月の青白い光りがふ降り注ぐ深夜なのだろうか。穴は地面に垂直に穿たれているから雨は降っていないだろう。固い鎧を着ているから風は少しあってもいいか。いずれにせよ、何年も土の中にいて、僅かの間、恋をするためだけに地上に生まれ出るかのようなその誕生は、とても美しい光景なのではないかと想像している。八月に入ると蝉時雨がもっと濃くなるね。