早春賦

カサコソびちゃびちゃとやかましく降り積もった雪を見ても大して楽しくない。今年は八頭の芽吹きに成功したみたいで、堅い皮を裂くように細い割れ目ができて、奥に翡翠色をのぞかせている。日々大きくかつ数を増している芽は犀の角のような形をしていて、その緑色の綺麗なこと。つくづく食べなくてよかった。
初夏、下町の細い路地の縁台に三つ足の水盤で栽培されている八頭を見かけて、何時かやってみようと思って、ずいぶんな年月を経てしまった。芋の葉には不思議な清浄さがあり、梅雨から夏の季節にかけての観賞用に好ましく映ったのだった。
また器もよかった。三つ足の薄いクリーム色の水盤で、祖母が庭の葉蘭だけを格好よく活けていた器によく似ている。
水盤があれば理想的なのだが、年を越して見切り品の棚に並んでいた八頭は今年百円ショップのプラスチックの植木鉢受け皿の中で芽吹き始めた。水盤は焦らず探すことにしよう。