初夏

寒グミの葉の一番大きいのものは四五センチにまでなった。はじめっからついていた固い葉は順次落ち、数枚を残しすのみ。芽吹きの快進撃は今も続いている。鱗のように見えた葉の表面の銀の斑は育つにつれて、濃くなる緑に埋もれてゆく。それでも買ったときからついていた、椿の葉のような一寸光沢のある固い葉からは想像できぬ柔らかさをいまだ保っていて、初夏という季節の穏やかでやさしい風に揺れる。
グミの葉の斑は実にもあって、光を少し通すような半透明の真紅の実を思い出したのだった。それはなんでも口に運ぶ年頃であったが、食べちゃダメだよと言われなくても躊躇した。とても美しい造形だったから。