来迎会

三年に一度の祭り九品仏浄真寺の二十五菩薩来迎会を見に行く。
欠かさず出向く理由が、境内で配られる団扇で、今年も無事手に入れることができた。丁度三年くらいで、そろそろ取り替え時になる我が家の寿司づくりの必携アイテムなのだ。
浄真寺は結構広い敷地を持っていて緑も多く、少し前はしばしば散策のルートに選ぶこともして、秋には銀杏ひろいに興じたりもできる気軽さがあった。
何時しか銀杏の生る木は実が熟す前に掃われ、子供が駆けずり回っていた広場には杭が打たれ、壮大な造園計画が始動を始めたのだった。で自然と足が遠のいていた。
むせ返るほどの緑と、都の無形文化財の指定を受けている奇祭を一目見ようと押しかける人波とが、ただでさえ飽和に近い湿度と高温にあいまって、参拝人の神経に魔法をかけ、奇祭を奇祭ならしめている。
迫るように植栽されている濃い緑の樹木は紅葉で、同行した者の言によれば、秋に紅葉した紅葉をもって西方浄土を出現させようというのではないか、ということだ。なるほど左様な目論見だったか。。
個人的にこの庭の内にある百日紅の赤が気に入っていて、それを眺める楽しみをひそかに抱いていたのだが。。切られたか、抜かれたか、無かったのである。。。

風もない炎暑の庭で、濃艶なサルスベリの花がゆらゆら揺れている。__サルスベリの紅色の花は、くっきりと明るくて、私には何となくインド的な感じがする。日本に輸入されたのは江戸時代というから、むろん古代中世の日本にはなかったはずなのに、どういうものか往古の奈良あたりの仏教寺院の庭に咲いていたとしても少しもおかしくはないような気がする。     − 澁澤龍彦「都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト」 −