かをり

静嘉堂文庫の庭は盛りの梅でそれは美しかった。があれだけ咲いているのにもかかわらず、一月の末から二月の寒さの厳しい頃のほころび始めを思うと、そのあでやかな姿と引き換えに、かをりの神髄を忘れてしまったような、浅い香りをちょっと淋しく思う。
それでも、視覚が補い、せせらぎや鳥の声なども加わって、多岐に感覚を刺激される所為なのか、心持はほどけて春の霞と同化するようで心地よい。 
もう春なのだなって  かをりはかおりにかわったのだなって