少し前、熊野古道を歩く番組で途中に榊(さかき)と樒(しきみ)が自生しているところがあるといっていた。
榊は神前へ、樒は仏前へ備える植物である。一部例外的に樒を神前へ備えるところもあるようだが、大体においてそのような決まりになっているようである。因みに樒は木偏に佛とも書く。
先だって満開に花を咲かせた樒に香りを感じず少しがっかりしたのだが、葉と樹皮に香気がある為、乾燥させて抹香や線香の材料になる植物である。香りを引き出すためには乾燥が必要なのかもしれない。焼香の抹香に使われているのが樒であるらしい。昔、土葬の際、墓を獣に荒らされぬよう、遺体とともに埋めたとも聞く。その謂れからであろうか
実は劇物指定があるほどの毒を有するそうだ。熊野古道の取材でもこの特性は避けられたようで言及されなかった。お寺のご住職の発言にも慎重さを感じたが、それは当然のことで、恐れることを無くした世間を訝ってというのもあるのだろう。しかし、植物の特性みたいなものは機会があれば知っておくべき知識だろうと私は思う。
焼香の煙は魔をよける根拠ある謂れを持つものであった。また樒を挿した花器の水は腐敗しないそうだ。
名の由来が「悪しき実」からきているというのはいかがなものだろう。人を腐乱という悪しき状態から守り清浄さを与える植物として聖のお山に自生しているのだと言ったほうがよいと思うのだが。