梅の実

今頃店頭に並ぶ梅は黄色く色づいて一寸赤いところがあって綺麗だな。きっと梅干用で袋に詰められているから嗅ぐことができないけど甘いいい香りがするのだろう。
庭に白梅と紅梅があって、白梅は姿を愛でる用で余り良い実は付けなかった。ピンクの花を桜のようにたくさんつける紅梅のほうはたわわに実をつけ、毎年梅干しと梅酒が沢山つけられていた。
梅雨に入る直前まで収穫を粘った。雨に当てると実が痛むと言って、収穫は晴れた日。毎日空をうかがっていた。それは梅雨明けのよく晴れた夏空の下の土用干しまで続く。
祖母の号令がかかった六月のある日、一斉に捥がれた梅が新聞紙を敷いた居間に山積みにされ仕分けされる。少しでも傷のあるものは除けられ、青く固い目のものを梅酒にしたように思う。
選ばれた梅は一つづつ乾いた布巾で清められて、爪楊枝で慎重にへたを取る。六月には、青天の霹靂の忙しいこんな一日があった。今売っているのほどは熟れてはいなかったが、少し色付いた梅の実の甘い香りが蘇る。
梅酒用の梅は偶に買うこともあるが、梅干し用は買ったことがない。梅干しは出来たのを買うし、梅酢はネットで見つけた和歌山の梅農園から買う。
手間の贅沢を買う時代なのだろうけど、記憶で満足できてる幸せもある。高いし