どうぶつえんけんぶついった

散歩を兼ねて日曜の午後出かけた。昨今の出不精体質に風穴を開けるべく
野々村仁清の色絵法螺貝香炉が出品されているという情報を得たからというのは起動した真相なのであったが、実態は隣にあった 魚尽し蒔絵螺鈿印籠 に目を奪われ、鳥に昆虫、駱駝や猿、河童に麒麟らが陶器や漆器金工などの彫刻に写し取られた姿を堪能してきたのだっった。

 
動物園はこのところの雨で急激に密度をました森を上がった丘の上にある。森の入り口へ一歩足を踏み込むと、大気の質が違う。水中に入り、水をかき分ける感覚に似て、手応えのある濃厚な木々の息吹に包まれた感じがする。
踏み入った途端、目の前を斜め上から足元近くへ横切る影ががあった。肉厚の照葉樹の葉の上へ着地した其れは、はじめ蝶かと思ったが、葉上で休む戦闘機のようなかっちりとした形態から、蛾の一種と思われる。天鵞絨のような華やかな黒色で、よく見ると首のところ、羽の付け根辺りに真紅の細い線がある。ブニュエルの「銀河」冒頭に出てくるアラン・キュニのようだ。
明時代の古銅象香炉に見とれていた時、肩のあたりがもぞもぞした。抑えると袖の下で手足をバタバタさせて足掻く。虫のようだ。森を抜けた折にえり口から迷い込んだのであろう。蚊除けのつもりもあって、手の甲が隠れるくらいのゆったりした麻のクルタを着てきたので、袖口から追い出すことは容易かったが、室内で放したくなかった。と戸惑う間に、可奴はいきよいよく飛び出したかと思うとすぐさま羽を広げ、姿をくらましてしまった。
姿を見たのはほんの一瞬であったが、瓢虫(てんとう虫)より少し大きい球形の甲虫で、象牙色の背に黒いの縦筋状の符、頭に小さな形の良い角状の触覚があり、甲から出した薄い羽は墨色で僧侶の夏の衣のようだった。
古銅象香炉を展示してある向かいあたりが昆虫コーナーで、爪の大きさくらいの貝とか象牙黒檀などで精巧に作られた蜘蛛とか蜂をあしらった印章や目貫などがあって、、私はアレの帰還を助けたのかもしれない。楽しい気分になってきた。。。
明日から象牙の目貫の瓢虫が展示に加わっているやもしれぬヨ