蜥蜴

ベランダでほんの一瞬、蜥蜴を目撃する。一秒の内の何分の一か、まさに数刹那という間の出来事だったが、それでも爬虫類に出くわした時独特の足が竦むというのか、縛られたような感覚を久しぶりに味わう。
幼い時、庭で蜥蜴を追い回し、追い詰められた蜥蜴が尻尾を切って逃げた事があって、その尻尾がくねくねといつまでもうごいていた記憶が再生される。夏の日だった。強い光線に踏み固められた地面にひびが入って捲れ上がり、顎にかかった麦わら帽のゴムひもがきつく擦れて痛かったことまで蘇る。
只々物珍しく、あのしなやかな生き物を手に取りたい一心だったが、蜥蜴からすれば迷惑至極な話しで尻尾を切って逃げてしまった。その時、あの足のすくむような感覚を初めて感じたのだった。
あれは蜥蜴からこちらに向けられた信号のようなものだったのではないだろうか。決して拒絶するわけではないけど私達には心地よい距離というものがあるのですよ、とでもいうような




金蛇というのかもしれないが其れはわからない。金蛇の舌は二枚に裂けているそうなのだが、そこまでは見分けることができなかった。
庭隅に巣くいでもしたらどうしよう