怪談

一年中で一番嫌いな季節夏枯れの景色がはや巷を覆っているっぽい。毎日発令される高温注意報に加えて街歩きが憂鬱だ。日々の買い物も楽しくない。一つ一つと色彩が薄れゆくような、明かりがポツポツと消えてゆき暗闇に吸い取られてゆくような、異界が迫ってきてすべてを飲み込もうと構えている気配を感じる。
いつもなら其れは夏の終わりが見え始め、あと少し我慢すれば涼風も立つだろうという時期にやってくる怖さで、旧盆の頃の怪談とかお化け屋敷を楽しむ余裕のある恐怖にも似ているのだけれど、街行く人の顔々に蝕まれた印が透けて見えたような類の恐怖はいけない。
こんなもんに今から囚われた日には本当の夏疲れのきつい晩夏にもたどり着けなくなる。鰻っくらい奮発したいところだけれどな