暴力の芽

正午に近い太陽が最も凶暴な時間帯に用があってバス停にいた。
数人の待ち人が既にいて、停留所の看板の脇に立っている街路樹の僅かばかりの影の内に押し合うようにして入っていた。どう見ても入り込む隙間はない。むしろ刻々と影の面積は減ってゆく状況であったので、通例並ぶ位置に身を置いたのだった。バスはまもなく来る頃だったし日傘もさしていたから
とこの暑いのに悪寒が走る。なんだろう。。影にいる全員がこちらを見ているのである。
だって私のいる場所はそこにはないし先客であるあなたちの先を越してバスに乗り込もうなんて気はないから。。
異様な時間であった。遠く逃げ水の中を乗るはずのバスがやってくるのが見えたような気がした、が咄嗟に地下鉄にルートを変更すべく歩き出したのだった。わたしはどうすればよかったのだろう。