存星

五島美術館「存星ー漆芸の色どり」を見にゆく。
漆芸をあれだけの量まとめてみたのは初めてだ。漆のねっとりとした質感。刷毛ではいてから、その刷毛目がならされて均一な面へと落ち着いてゆく速度に囚われたような、そんな漆芸の持つ魅力の訳の一端を引きずって数日呆けている。
存星とは中国明時代に行われた填漆(てんしつ)という漆芸の技法のことだ(と解する)。填漆と存星は同義である。という字は空間を隙間なく埋め尽くすという意味を持つようで、正当な存星の名を配する十二三世紀明時代の作品は、これ以上細かな細工は人の手では無理だろうという限界まで細かい。それを模様以外の沈んだ箇所に布目のような籠目のような抑揚のない均質な表現で配してある。さらに幾重にも塗り重ねられた色漆の層を研ぎ出して模様を浮き上がらせている。気が遠くなるどころかどこかへ連れ去られる感じだ。
今、我に返りつつ思い返すに、時代が近世にちかづくに連れ、技術はうまいこと省略され誤魔化されてきているように見えて、はたして人類は進歩しているのだろうか、という思いにとらわれている。
省略され誤魔化されたように見える洗練の段階から日本の漆芸はスタートしている。Japanと呼ばれ固有の美と誇る工芸として