谷崎潤一郎展を見にゆく

己は禅僧のような枯淡な禁欲生活を送るにはあんまり意地が弱過ぎる。あんまり感性が鋭すぎる。おそらく己は霊魂の不滅を解くよりも、人間の美を歌ふために生まれて来た男に違いない。己はいまだに自分を凡人だと思うことは出来ぬ。己はどうしても天才を持って居るような気がする。己が自分の本当の使命を自覚して、人間界の美を讃へ、宴楽を歌へば、己が天才は真実の光を発揮するのだ。   -「神童」-

中学生の私が虜になった言葉を持って始まった展示を気が付けば二時間以上閉館のチャイムが鳴るまで夢中で閲覧した。

できるだけ早い時期に己が天才に気付く能力こそが天才なのではないかと思った。

誰もああなりたいと憧れを抱く種類の作家ではない。なんで読んでみようと思ったのかは覚えていないが、それこそ運命だったのだろうな。変わらぬ想いに再会して嬉しくもあった。