甘夏

果汁に塩と砂糖を加減して寿司酢を作り、具に人参を薄甘く炊いて、味出しに海老、あおみに絹さやか菜の花、砂糖を入れて丁寧に煎り付けた卵。もちろん薄皮を剥いた実もたっぷりと。家の春のご馳走だ!

甘夏は店頭に並びだすと初夏まであるからこれから頻繁に食卓に上るが、なんといっても出端の今、桜が咲く前のいまが旨い。それを上記の材料でもって鮨に誂えると実に美しい景色の寿司になる。

甘夏というのは夏ミカンの枝替わりしたもので、品種名を「川野夏橙(かわのなつだいだい)」という。昭和の初めに大分で発見され、昭和25年に品種登録をされたそうだ。香りがよく酸味も穏やかでさわやかな甘みがある好物である。

枝変わりというのは、芽条変異ともいい、植物体のある枝の部分に突然変異が起きて花の色変わりだの葉に斑が入るなどすること。すっぱい夏ミカンが食べやすく変わっっているのを発見した川野さんの驚きと喜びはいかばかりであったろう。荒野にマナが下された時のモーセのように天を仰いで感謝したに違いない。
実験室で生み出される新種でないと思うだけでも素敵な果物だと思う。より改善がなされていなければの話だが、そこのとこかんがえちゃうとせっかくのお寿司の味にも触るのでそこまで