のわき

野分の過ぎたあしたは、いみじうあはれにをかしけれ 独特な風情あるものだ。

まだ八月のうちの大風の後、何時も寄る不動堂に詣でた。
台風一過の見事に晴れ上がった空をめでてからふと足元に目を移すと、柱の下に雀の子がまん丸に身をすくめて居った。風で巣から落ちたのだろう。鳥は落ちた子を拾い上げることはできないから落ちた時点で諦めると聞いたことがあるが、丸く膨らんだようになった小鳥はまだ生きていて、拾い上げればきっと暖かいに違いない。人を恐れるでもなく硬く目を閉じて動かない。しばらく対峙するように見ていると、不動明王の足元で覚悟と従順の気に包まれて気高くさえ見えてきた。私はお堂に向き直り、再度手を合わすと帰途に就いた。
今もこの出来事を思い起こして考える。私はこの命に救助の手を差し伸べるべきだったのだろうかと