陽だまりの会話

久しぶりに長野の山奥にこもって染色をやっている友人に会う。小一時間二人だけで話をする。この人は都会の喧騒を嫌い天竜川のほとりに住み着いてずいぶんになる。お土産をもらった。彼女が日々の暮らしの中で河原や野山で集めた草木で染めたいろいろな絹地を丹念にはぎあわせたそれは美しい小さな袋物に仕立てられていて、いたどり・きはだ・栗の木にくるみ・月見草。真絹に染め分けられたそれらの色の美しいこと!淡い色彩が歌の様に配置され、いにしえの夢のよう。久しぶりに色のメロディーの中に遊んだ。彼女は再び一人きりの幸福の住処に戻ってゆく。
この美しい入れ物に暖かな色彩だけを集めてしまおうと思う。よい日だった。