2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

昨日少し風があったせいだろうか。日干し煉瓦のように固くしまった土の上に、銀杏の青い実がこぼれていて、周囲に幾つもの蝉穴を見つけた。一度この暗く深い穴から蝉が地上へ出てくるところを見てみたい。 それは月の無い晩だろうか、それとも満月の青白い光…

熱帯夜

洋杯の中に弾ける炭酸に遠い花火の残響を聞く

古書屋にて猫拾うらん夏の夕暮れ。大仏次郎「ねこのいる日々」を手に入れる。

横浜の港の見える丘公園にある大仏次郎館に霧笛という喫茶店があって、そこで七八枚をセットにして、藤田の銅版画の猫がポストカードにされて売られていた。大仏次郎、泉鏡花、谷崎潤一郎を三大愛猫家作家と括る人もあるほど愛猫家で有名な人である。生きて…

暑中休暇始動

植物たちが息を潜める夏枯れの午後。夏休みが始まったばかりだというのに、旧盆の頃みたいに妙に静かな時が流れている。 気も遠くなるような暑さの中、根津美術館の「いのりのかたち展」へ出かけてみた。予てから、新しくなった建物を見ておこうというのもあ…

海鬼灯

何故鬼灯の音なんか思い出したのかというと、つい昨日までワールドカップを通して聞こえていたブブゼラの音階のない単調な音が記憶の中枢を刺激したからなのではないだろうか。開幕当初は、数年前イラクだったか中東の国であった試合の、男ばかりの観客によ…

鬼灯

花屋の店先やらスーパーの入り口などで鬼灯の鉢を見かける。十日辺りにほおずき市があって売れ残りってわけじゃないだろうけど、ああいったものは、(朝顔とか釣忍とかも)何かの縁起の市で手に入れたい。 皮をむいて裏返しにして羽根突きの羽根のようにして…

もう一つのアシール

始め語源か何かかと思ったが、聖域のほうはAsylで、いまひとつはAzil、全く関係はない。か。。 アジール文化というのは、紀元前一万年頃西ヨーロッパ、現在のフランス南部からスペイン北部辺りに生まれた文化で、その担い手はクロマニヨン人である。クロマニ…

吉屋信子

一寸前ちくま文庫の文豪怪談傑作集の吉屋信子を読んだ。少女小説家とか括られて文学全集にも登場しない作家なのだが文章家としての職人気質を感る。 鎌倉を散策していて出くわした、長谷の住宅街に長く続く弁柄をませたようなサモンピンクの塀の屋敷への興味…

七夕

七夕に雲の帳たぁ気が効いてるじゃねえか

桜桃

山形に郷里を持つ人からさくらんぼのおすそ分けを頂いた。内輪ということもあって少々の傷や型の悪いもの、二連ではないものなのだが、甘くて張りがあって、歯を当てるとはじけるように果汁が噴出し、十分その味覚を堪能した。がとりわけ薫り高くはないこの…

数日前一寸面白い夢を見たので覚えておこうと心に留めたはずだったのだが、いざ書き止めようと記憶を紐解いたところ、其れは霞がかかったように曖昧模糊として言葉にならない。鮮明な夢で、憶えていられるとの確信があったから少々狼狽した。 過ごしてきた年…

ニース風サラダ

レタス・胡瓜・トマト・ジャガイモ・インゲン。オリーヴ・ツナの缶詰・アンチョビー。それに解けるような茹で加減の卵。それをマスタードベースのドレッシングでいただく。何がニース風なのかはわからないのだが、どの材料を欠いても旨くはない。生野菜はぱ…

通り雨と鬼ごっこ

あれこれ用を済ませて湿度百パーセントの外気の中へ飛び込むように出ると礫の様な雨がアスファルトに砕ける。荷物の下敷きになった折り畳み傘を引きずり出すのは至難事だ。分厚い雲には穴が開いていて遠く青空が望めるから通り雨と判断して、軒が借りられる…