2010-01-01から1年間の記事一覧

正月の支度

おせち料理は敢えて作らない主義なのだけれど料理の番組は黒豆の煮方だとかなますの甘酢の配合だとかやっていて、作れよと呼びかけているみたいだ。車の排気ガスが減って、凛とした暮れも詰まったという空気には民の竈から上る湯気が欠かせない要素みたいだ…

毎年繰り返されるクリスマスディナーに思った

骨付き鶏足を、ここ数年来続いているコックオーヴァンにするつもりでいたのだが、今年はヴィネガーとワインで下味をしてオーヴンで焼く調理法に変えてみた。ところが初めての料理であるにも関わらず目新しさが皆無なのである。 それはきっとイメージに添って…

狙いは外れた・・

毛糸をしこたま仕入れた。ニットの帽子屋さんの半端毛糸のバーゲンが毎年今頃にあって、いつも買おうかどうしようか迷ううちに過ぎてしまう。過ぎてしまってから買えばよかったとひどく後悔するので、忘れないように肝に銘じておいたのだ。 物は上等なウール…

蠟月

蝋月も早中!今年の蠟祭にかけられるものは何だろう。考える間も気が急いて益々に散かり、そのうちどうでもよくなるおなじみの師走病がクリスマスもまだだというのに襲ってくる。 救いのような久しぶりの雨音にちょっと正気付いて、この雨をきっかけに動く元…

クリスマスツリー

異常に暑かった夏の所為で、遅れ気味だといわれる紅葉もあと少しで一斉に葉を落とし、巷の木々は冬の姿になるのだろう。通りでは一晩のうちに出現した色濃い緑の針葉樹が、電飾と原色の人工をまとって、星を頂き、師走の明日を待ち構えている。

師走の足音

紅葉の葉っぱの水分がだいぶんと抜けて半透明になってきた。もうじき一斉に地に落ちて街路をからからと笑いながら駆け抜けてゆくのだろう。冬って色は薄いけれどにぎやかな季節なんだね

秋晴れ

雲一つなく完璧に晴れ渡った空。完璧のペキを碧に置き換えたくなるような藍に近い空の色。目を凝らせば星が透けて見える。 心のうちに問いかけるような寒さで、咽喉元にぐっと痛みのようなものが走り、物が凍る寒さに対してなのか物思う季節に対してなのか、…

巻繊汁

昨夜は寒かったのでけんちん汁をこしらえた。 狭い知識によれば味噌仕立てなのが薩摩汁で醤油仕立てがけんちん汁なのだが、薩摩汁はサツマイモを入れ肉は鶏肉という説もある。けんちん汁は建長寺に由来しているので、あるいはケンチンという典座が考案したの…

光の王国

日暮れ時の光の変化がきれいだ。すっかり空気が入れ替わったのだろう。見上げると街路樹の木の葉がシルエットになって、今日なんかは曇り空だけど白黒にコントラストがはっきりしていて、街灯がともるとまるでマグリットの絵のようだ。

銀杏の季節

また銀杏の季節が巡ってきた。ほんの少し晩御飯のぎんなんごはんの分拾おうと思っても拾い出すともう少しあとちょっと、気が付けば袋いっぱいで本日の買い出し荷物と合わせると腕が引きちぎれそうな重さになっている。 持ち帰って皮をむくのにまた一苦労する…

高台

五島美術館「茶道具の精華」展示の入れ替えがあったので出かける。 好ましい茶碗の高台というのは意外なほど小さいというのを、のんこうや長次郎の作を見て改めて思った。しかし。。。 入れ替えで瀬戸黒茶碗、銘を武蔵坊というのが出品されていて、これは返…

秘色色

九月の声を聞いたばかりの頃。五島美術館の「茶道具の精華」を見に出かける。九月は声を発したが劫火の最中には変わりなく、余りの過酷さにめげた。めげはしたけれど五島コレクションの真髄に触れたような極上のものが見れたことが嬉しかった。次の「源氏物…

秋へ

日の長さが変わって幾分物悲しい気分が襲い来る季節。今日あたりはまだかなり暑く、明日も続くらしいが、それでも確実に秋という季節の中にいることが実感出来るので、暑さに奪われた如き時を思い、取り戻そうと焦慮に駆られる。そして疲弊。明後日には雨が…

擂り鉢

いくつか持っているのだが、またもっと大きいのが欲しくなっている。はじめっから大きいのを持てばよかったのだが場所をとると思って少しづつ大きなものを購入してきた。次はいよいよ業務用か。擂粉木も必要だな。小さいものは山椒塩、胡麻和え白和えなどで…

晩夏

日付を見ればこの暑さもあと一息というところまで来たと思ってもよいのか、、とは言うものの本日も耐え難く暑い。せめて朝夕にまで篭る熱気からくらいそろそろ開放されたいと思う。満月は心地よく眺めたいな。 折角の秋になってのびないようにと特に考えての…

映画鑑賞

久しぶりに映画を見た。二本立ての。冷えひえの映画館で半日を過ごす。これも夏の楽しみだ。 「ベジャール、そしてバレーはつづく」:少し前に見たローザンヌのバレーコンクールの課題が随所に見られて面白かった。 バレーへの夢を見たことがあって、許され…

涼を求めて

初夏の頃、目を射るような蒼い紫陽花の群れが夜叉塚を覆い隠すように咲いているのに心を奪われて、刻まれた年号を写し取る。 寛延二年己巳二月二十三日安鎮。寛延は1748年から1750年、二年というと1749年で、江戸中期の己巳の年に密教の修法によ…

昨日少し風があったせいだろうか。日干し煉瓦のように固くしまった土の上に、銀杏の青い実がこぼれていて、周囲に幾つもの蝉穴を見つけた。一度この暗く深い穴から蝉が地上へ出てくるところを見てみたい。 それは月の無い晩だろうか、それとも満月の青白い光…

熱帯夜

洋杯の中に弾ける炭酸に遠い花火の残響を聞く

古書屋にて猫拾うらん夏の夕暮れ。大仏次郎「ねこのいる日々」を手に入れる。

横浜の港の見える丘公園にある大仏次郎館に霧笛という喫茶店があって、そこで七八枚をセットにして、藤田の銅版画の猫がポストカードにされて売られていた。大仏次郎、泉鏡花、谷崎潤一郎を三大愛猫家作家と括る人もあるほど愛猫家で有名な人である。生きて…

暑中休暇始動

植物たちが息を潜める夏枯れの午後。夏休みが始まったばかりだというのに、旧盆の頃みたいに妙に静かな時が流れている。 気も遠くなるような暑さの中、根津美術館の「いのりのかたち展」へ出かけてみた。予てから、新しくなった建物を見ておこうというのもあ…

海鬼灯

何故鬼灯の音なんか思い出したのかというと、つい昨日までワールドカップを通して聞こえていたブブゼラの音階のない単調な音が記憶の中枢を刺激したからなのではないだろうか。開幕当初は、数年前イラクだったか中東の国であった試合の、男ばかりの観客によ…

鬼灯

花屋の店先やらスーパーの入り口などで鬼灯の鉢を見かける。十日辺りにほおずき市があって売れ残りってわけじゃないだろうけど、ああいったものは、(朝顔とか釣忍とかも)何かの縁起の市で手に入れたい。 皮をむいて裏返しにして羽根突きの羽根のようにして…

もう一つのアシール

始め語源か何かかと思ったが、聖域のほうはAsylで、いまひとつはAzil、全く関係はない。か。。 アジール文化というのは、紀元前一万年頃西ヨーロッパ、現在のフランス南部からスペイン北部辺りに生まれた文化で、その担い手はクロマニヨン人である。クロマニ…

吉屋信子

一寸前ちくま文庫の文豪怪談傑作集の吉屋信子を読んだ。少女小説家とか括られて文学全集にも登場しない作家なのだが文章家としての職人気質を感る。 鎌倉を散策していて出くわした、長谷の住宅街に長く続く弁柄をませたようなサモンピンクの塀の屋敷への興味…

七夕

七夕に雲の帳たぁ気が効いてるじゃねえか

桜桃

山形に郷里を持つ人からさくらんぼのおすそ分けを頂いた。内輪ということもあって少々の傷や型の悪いもの、二連ではないものなのだが、甘くて張りがあって、歯を当てるとはじけるように果汁が噴出し、十分その味覚を堪能した。がとりわけ薫り高くはないこの…

数日前一寸面白い夢を見たので覚えておこうと心に留めたはずだったのだが、いざ書き止めようと記憶を紐解いたところ、其れは霞がかかったように曖昧模糊として言葉にならない。鮮明な夢で、憶えていられるとの確信があったから少々狼狽した。 過ごしてきた年…

ニース風サラダ

レタス・胡瓜・トマト・ジャガイモ・インゲン。オリーヴ・ツナの缶詰・アンチョビー。それに解けるような茹で加減の卵。それをマスタードベースのドレッシングでいただく。何がニース風なのかはわからないのだが、どの材料を欠いても旨くはない。生野菜はぱ…

通り雨と鬼ごっこ

あれこれ用を済ませて湿度百パーセントの外気の中へ飛び込むように出ると礫の様な雨がアスファルトに砕ける。荷物の下敷きになった折り畳み傘を引きずり出すのは至難事だ。分厚い雲には穴が開いていて遠く青空が望めるから通り雨と判断して、軒が借りられる…