ベランダにて

初夏を思わせるような陽気が続いて桜も終わったなどとため息をつく暇も隙も与えず既に木々は碧を纏っている。苗植月の転ともいわれる卯の月卯月は小の月でもあり名のとおり足の早い月で襲い掛かるような碧の波に飲み込まれて唖然としてしまいうっかり見過ごすところだった。
ベランダの緑の世話をしていると常緑の植物が痒いから掻いてくれとまるで猫みたいなことを言い出した。根元をかき回してやると古い葉をぱらぱらと落とし軟らかい碧の手足を広げる。今年は春の嵐が少なくいたぶる風もあまり吹かなかったから植物たちは我儘で構ってやると限なく五月蝿いことを言う。