蝉時雨

とどまることを知らず降りしきる雨の如く。世界は蝉に支配されているのではないかと思えてくる。しゃらしゃらと、あれは腹の蛇腹を擦りあわせて出す音らしいので鳴き声というのとはちょっと違うのではないだろうか。
脳のどこかに呼応する時があって、耳から聞こえてくるのではないような気がしてくることがある。耳で聞いていたかと思っていると、丁度、凪を挟んで海風と陸風が入れ替わるように逆転の時があるのだ。
先ほど近くの木でじーじーやりだした蝉がいて、部屋の中にいて見ていないのに、あの木に留まって啼いているのだなと特定できる時があった。しかし直ぐになきやんでしまう。何度も気を取り直したかのように気力を振り絞るのだけどもう力がさほど残っていないのか切ない主張をしばらく繰り返し、程なくしてぱったりとやんだ。
あとに訪れた妙な静寂に悲しい様な切ない様な迫るものがあって、今気分はlow。この時を蝉凪と命名するか。気が付くとしゃらしゃらは頭の中に移行していた