夢の漂流物から

六本木に古い知り合いのやっている現代アートに括られる作家を扱っている画廊がある。めったに行くことはないが、たまたま夢の漂流物展を見に行く前に気まぐれを起こし足を向けた。
その彼が若いときから三木富雄の耳をお小遣いをためては収集していて、私は訪ねるたびにひそかに耳に会えるのを楽しみにしていた。
時に床に置かれた動かすことも出来ないような金属の耳。壁に掛けられたバラをあしらった石膏の耳。。。
漂流物の中にあった耳はひときわシンプルで大きさも頃合で一人ではなかった。
彼は自殺したがそれを誰も意外には思わなかった様に記憶する。周りの人々は彼がようやく手にした静寂を祝ったのではないかとすら思う。。。
大昔彼の記述を読んだ。鋭い言葉と明確な意識。そこには何の雑味もない私理想の言葉があった。
言葉と作品。正直言って言葉がなければ心酔することもなかったかもしれない。

知り合いは耳のほとんどを売ったと言う。。いつでも会いに行ける全国の美術館に。。
耳は何か面白いことを聞いているだろうか。