開幕前

晴れたのに、晴れて暖かくなるといったのに、雲ひとつない空だったのに、日陰になった植え込みに雪がしっかり残っていて、昼間は歩き回っていたのにあまり記憶がない。木蓮の花の脱ぎ捨てた銀ねず色の毛皮、見上げると後一寸でほころびそうだった。春の開幕の一歩手前の緊張の静寂か。