桜桃

山形に郷里を持つ人からさくらんぼのおすそ分けを頂いた。内輪ということもあって少々の傷や型の悪いもの、二連ではないものなのだが、甘くて張りがあって、歯を当てるとはじけるように果汁が噴出し、十分その味覚を堪能した。がとりわけ薫り高くはないこの果物の真価はこの食感と張り切った艶のある紅色の愛らしい二連の形にあるのだと思う。
祖母はこの果物のことをゆすら梅と言って愛していたし、桜桃ともいう。そういえば太宰の命日は過ぎてしまったか。桜桃忌は太宰の誕生日でもあるので遺族からは生誕記念日に変えて欲しいとの要望が出ているという話を目にした。心中であったその死を思い起こさせるからなのだろうか。

ゆさぶればとおきかみなりあめのおとおしとおもいてくうもあじなり