早春賦

朝方、ベランダのバケツの水に薄い氷が張っていた。でももう冬の寒さではない。大気には水気やら花粉やら花の伝言といった、生命の熱気みたいなものが沢山詰め込まれていて、えらく密度が濃い。そして、ボッティチェルリの「春」の中の西風のように下品でがらが悪い。風が吹けば風とつるんで道行く人に爪を立てるような絡み様をする。冷気は食い込むように冷たく、芯まで凍えるようで、生き物全てにつらい時期だ。春。早春