墓参り

先週、所要があり西麻布の青山墓地下にいた。早めに用が済んだのでどうしたものかと墓地に入り口あたりで思案に暮れていると、青青と木々の茂った墓地へ一歩入ったあたりで佇むお婆さんが一寸会釈したので、挨拶を返しながら吸い寄せられるように緑の木陰の中へ入った。途端に心地よい風に取り巻かれあまり心地の良いものだから、しばし散歩に付き合うことにした。
彼女のペースに合わせてゆっくりと私にない歩調で歩くと、一寸昇ったところにある広瀬中尉の墓へ案内してしてくれた。
広瀬武夫は去年まで暮れにやっていたNHKのドラマ「坂の上の雲」で知ってはいたが、軍神として奉られていることは知らなかった。あとで少し調べたのだが奉られた理由はきっとその清廉な人柄とロシアでのロマンスが人々の心に響いたからではないかと勝手に推察した。
数年前まではもっ広かったという。どうりで鳥居とか灯篭とかが窮屈そうだったが、最早そこには、神とあがめて参る人もなく安堵の静けさの様なものがあった。
今日もかなり暑いが、先週は今より確実に暑く、あの日の散歩は蜃気楼のような記憶になっている