常盤忍

AVRIL2017-09-06

此奴はこの気候が好きなのだ。湿気が多く、曇天で、急に気温が下がる今日みたいな日は好物のメランコリーがたくさん落ちている

逃げ場のない酷暑から解放された人は、突然与えられたこんな気候の中で、安堵とか喜びとかを感じるよりも先に根拠のない不安に囚われるもののようだ。
突然放り込まれた懐疑の迷宮の中で途方に暮れてしまうのだ
こんな日、常盤忍は黄色から赤へと紅葉する古い葉の下から 怖ず怖ずと固く丸まった葉を広げる。
植木鉢から脱走を試みる猫の手のような毛むくじゃらの根っこの上に、真っ黒い鱗状に硬化した鳥の手のような古根の上にも
悪夢を食べてくれるという獏のように、常盤忍もまた、季節が変わる時の憂鬱の種を片付けてくれる。