秘色色

九月の声を聞いたばかりの頃。五島美術館の「茶道具の精華」を見に出かける。九月は声を発したが劫火の最中には変わりなく、余りの過酷さにめげた。めげはしたけれど五島コレクションの真髄に触れたような極上のものが見れたことが嬉しかった。次の「源氏物語絵巻」の展示を最期に二年の予定で改装工事に入るので建物を見ておこうというのもあったのだが、鬱蒼とした庭園の湿度は物凄く、蚊の大群に追われて庭園散策はままならなかったのが残念だった。唯先だって出かけた根津美術館の庭に比べると手が入っていない野生的な印象がむしろ好ましく、単に改装前ということなのかもしれないが、息がつまるほどの手入れはしてもらいたくないなと思う。秘色という色を目の当たりに見た感動を定着したりするには行き届きすぎた空間は帰って邪魔な気がする。