ベトナムの皿

青磁なのだが青ではない。どちらかというと緑だ。古いカラー見本を引っ張り出して照合してみると青磁色というのがあるが白すぎる。浅緑、生竹(おいたけ)寂浅葱(さびあさぎ)木賊色(とくさ)。どれも、濃過ぎ、蒼すぎ、明るすぎるが、色の表現というのは面白い。
装飾には陰と陽、二つの手法が使われていて、陰刻によって流水を、陽刻によって二匹の魚が中央に巴の形に配された図柄だ。裏を返すと、高台から放射状に波型の凹凸ができていて凹んだところに釉薬が溜り、花びらのような模様を形成する。縁は雲形に波を打ち外へ向けて程よく反る。
青磁の青は鉄とか鉛、或いは銅の発色で生まれる。磁器は地をきめの細かいガラス質の土で白く焼き上げるので釉薬の色が映える。
備前とか信楽などの土物の灰(燃料の木の灰)を被ってできた自然釉溜りをよく見ると、緑色を帯びたガラス質であったりする。私は秘色とか青瓷(あおし)の青は木灰によるものだと思っていて、のちに調合によって作られたにしろ自然が発色した色であるから惹かれるのだと信じている。
ベトナムの民芸品屋の隅に、少々難あり品としてよけられた皿が、憧れの翠沼の湖面のような輝きをまとってあるのを見つけた時、買わずにいられなかった言い訳。ほんとやすかったんだから!