ひな祭り

唐の大暦十四年三月上巳、代宗皇帝が在京各国の使臣を蓬莱宮に招いて曲水の宴を催したとき、ちょっとした紛争が起こった。南条範夫『燈台鬼』

昨日開いた頁が偶然こんな書き出しだった。上巳(じょうし)とは五節句の一つで、桃の節句、雛の節句、三月の節句、重三、まさに昨日のことで、曲水の宴はその日に執り行われた雅な行事だった。
貴族の庭園に水の流れる仕掛けが作られ上流から杯が流される。水が曲がるあたりに幾つかの席が設けられ、詩歌と杯の遣り取りがなされる典雅な遊びだ。
京都のどこかの庭園でこの仕掛けの再現を見たことがあるが、それはごく浅い田の畝のようなものだった。小春日和の桃の節句、着飾って野外に集った貴族達は生きたひな人形のようだったろう。そのまま曲水に 乗って 流れて 流しびな だて。
南条範夫の小説はというと、大陸的というか、殺戮のチェスゲームばりに残酷で犀星王朝物ほどには嘘もなしといったとこ。