青い鳥

昨日だったか、朝の連続ドラマのワンシーンで国語の授業風景なのだろう、子供が教科書を読んでいて、それがここのところ本棚を引っ掻き回して探しているメーテルリンクの「青い鳥」であったので捜索の意欲が急に失われ、散かりを直すのが難儀。
あれは戯曲であるから朗読なんかではなく役柄を分けて読み分けるのが面白いだろうと思う。犬や猫、パンや砂糖が擬人化されて登場し、メーテルリンクは各場面の背景のデザインから、衣装の細かい指定なんかもしているから情景がつかみやすく、演劇に興味を持つ取っ掛かりとなった思い出深い作品でもある。
中に思い出の国という場面があって、幕が開くと死んだ祖父母が眠っている。チルチルとミチルが登場するとおもむろに目をさまし、飼っていた猫や犬まで加わって楽しげな再開の場面が繰り広げられる。迎え火を炊き、灯篭をしつらえて亡き人を偲ぶこの月八月の光景のようだと思っている。私は死生観に一寸こんな軽さを持っていて、この場の終わりに死者たちが名残も惜しまず子供たちを追い返すようにして、場の初めと同じ位置に戻り眠りにつくところが好きだったりする。
舞台という一方向を意識すればいい世界は複雑な物事をも明快に、悲しみさえもあっさりと片付けてくれる魅力的な世界だ。けれど一番好きな場面、確かめたかった箇所は、生まれる前の子供たちが生まれる支度を整えて船出を待つ港の場面だったのだが。。